傷つき始めた自己肯定感 ~ 第2象限

alone emperor penguin

前回の記事「赤ちゃんの自己肯定感」では、人は誰もが自己否定も存在否定もない状態で生まれてきており、それが自己肯定感の第1象限であることをお伝えしました。

この記事では自己肯定感の2番目の類型、自己肯定感の第2象限について考えます。

存在否定の始まり ー 自己肯定感の第2象限

自己肯定感の第2象限は、4つの類型のうち左上に位置する、自己否定ナシ・存在否定アリの状態です。(下記の図で赤枠で囲んだ部分)

どのようにして存在否定ナシだったものが存在否定アリに変わるのでしょうか?

自己肯定感の第2象限

自己肯定感の始まり

私たちの人生は右上に位置する第1象限の自己否定がなく存在否定もない(つまり自己肯定感が傷ついていない)状態で始まります。(赤ちゃんの自己肯定感 参照)

そしてその時点では、自己肯定感という概念自体が存在しないも同然です。それは病気や怪我を経て始めて、私たちが健康という概念に気づき取り組むのと似ています。

しかし、その(自己肯定感が傷ついていない)状態は長くは続きません。

いつしか私たちは、人との関わりを通して「人とは違う自分」を意識するようになり、同時に自分が人からどう扱われているかが気になるようになります。

その過程では、私たちは自分が蔑ろにされたという気持ちを味わいやすくなります。どんなに愛されても、どんなに大切にされても、どんなに良い仲間がいても、それは多くの人に起こると考えられます。生存本能により承認欲求センサーが始動しているからです。(愛情の異変 参照)

私たちは「自分は認められていないかも」と疑い、その証拠探しを続け、どんな小さなことにもそれらしき証拠を見つけ、そして落胆します。自作自演かもしれませんが、演じている本人は真剣です。

そこから「自分の存在が受け入れられていない」という存在受容が侵された状態となり、「自分が(このままの)自分であって大丈夫」とは思えなくなります。

モデルには例外がある

ここで述べているのはあくまでも私たちが自己肯定感という概念とそのメカニズムをよりよく理解するためのモデルです。

人の数だけ個性があり、固有の経験があり、性格があり、今の環境があります。ですから、先に述べた第2象限が始まる(つまり自己肯定感が傷つく)プロセスが誰にでも必ず当てはまると考えるわけにはいきません。

例えば、承認欲求センサーの働きが弱い人も、「鈍感力」が高くて人のすべての言動を好意的に受け止めることが出来る人もいるはずです。そのことを理解した上で、当記事の解説をご活用ください。

alone emperor penguin

第2象限チャレンジは繰り返す

幼少期の傷跡

最初の存在否定のプロセスを、多くの人が自意識が芽生える幼少期に経験します。

そして、初めての存在否定(並びに承認欲求との格闘)は、私たちに強烈な印象を残します。結果としてそれは、人格形成に影響を及ぼし、その後の人生を左右します。その存在否定が誰との関係性において、どの領域で進行したかによって、どこにどんな傷跡が残されるのかが変わり、そしてその傷跡が開きやすくなっているのだと言えます。

新しい環境が誘発する

同じことは繰り返し、何度も起きる可能性がありますが、特に環境が変わるときに起きやすくなります。

例えば、学校に入学したときやクラス替えのとき、部活やサークルに入ったとき、社会人として新しい組織に属したとき、また卒業や退職などでこれまであった人間関係が失われ、新しい人との出会いを求めているときなどです。

そのようなとき、私たちはなんとか仲間として受け入れてもらいたいと思い、人の反応に敏感になり、そして傷つき(存在否定を起こし)やすくなります。

客観的事実よりも「どう観るか」という主観の働き

ここで大切なのは「受け入れられていない」というのは主観の働きであり、客観的事実と同一ではないことに気付くことです。

もちろん「私は✖✖された」というのは自分の中で揺るぎない事実として存在しているでしょう。しかし、その事実をどう捉えるかは自分次第であり、捉え方が変わると事実が変わってくるのです。

そのことがわかると、自己肯定感を理解し育てていく糸口が見つかりやすくなります。(この象限への対処方法は別の記事でさらに詳しく解説します。)

sliding emperor penguin

承認欲求と上手に付き合う

しかし第2象限は「今のままの自分ではマズイ」という存在否定が始まっていますが、まだ「自分が自分を受け入れられない」という自己否定には至っていない状態です。

自己肯定感が傷つくプロセスの中では、まだ初期段階だと言えます。

私たちが行っているカウンセリングやコーチングでは、この段階の方たちと関わることが多いというのが実感です。

この段階で、自己肯定感のメカニズムに気づき、自分の承認欲求と上手に付き合えるようになれば、次の段階の第3象限に進まなくて済みます。(承認欲求と上手に付き合う方法は別の記事で詳しく解説します。)

簡単なまとめ

私たちの多くが、幼少期に存在否定を経験します。

それは私たちの自意識が芽生えたとき、承認欲求が発動し、そして「自分が認められていない証拠探し」をしてしまうからです。

このメカニズムがわかると、自己肯定感がより理解できるようになり、その対処もしやすくなります。