
前回の記事「自己肯定感の類型」では自己肯定感の2つの要素から導き出せる4つの類型について解説しました。この記事ではその4つの類型の内、最初の類型(第1象限)について考えます。
自己肯定感の4つの類型のうち、もっとも大切なのがこの類型です。解説はやや複雑ですが、他の類型を理解する基礎ともなりますので、じっくりと読み理解していただければと思います。
自己肯定感の4類型を確認し変換する
前回の復習になりますが、自己肯定感の2つの要素
- あるがままの自分を受け入れる
- 自分が自分であって大丈夫
を基に4つの類型
- 自己受容〇 存在受容〇
- 自己受容〇 存在受容✕
- 自己受容✕ 存在受容✕
- 自己受容✕ 存在受容〇
がある、ということを示しているのが次の2つの画像です。


今回はそこに大きな変更を加えます。最初に変更後の画像をお見せしましょう。
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言葉使いはできるだけ否定形を避け肯定形を使った方が良いので前回の記事の4類型の解説では肯定形で表記しました。
しかし、受容・承認という言葉づかいでは積極的な受容・承認の意味が強調され、消極的な受容・承認(すなわち、否定のないニュートラルな状態)が失われる恐れがあります。そのため、ここではあえて否定形を使います。
具体的には「自己受容と存在受容の〇・✕」を書き換えて、「自己否定と存在否定のアリ・ナシ」で表記します。
そのポイントを第1象限で表せば「積極的に自己受容も存在承認もしていないけれど、自己否定もせず存在否定もしていない」状態も第1象限に含まれるという点です。
自己肯定感はネガティブから生まれた概念
自己肯定感は生きづらさを抱えた方たちへのカウンセリングの現場で生まれた言葉です。なんとか自己否定・存在否定を克服して生きやすくなりたいという、マイナスからスタートしている概念なのです。
もちろん、マイナスを解消するだけでなく、ゼロよりもずっと上のプラスを目指す方が良いと思う気持ちはわかります。しかしここではあえて、自己肯定感の本質を理解するために第一象限には「自己否定がない」「存在否定がない」状態が含まれることを確認しておきます。
赤ちゃんは自己肯定感が高い

自己肯定感の第1象限を理解する上でまず考えたいのが赤ちゃんです。
生まれたての赤ちゃんは、お腹がすけばおぎゃーと泣き、眠くなればおぎゃーと泣き、おむつが気持ち悪ければおぎゃーと泣きます。それが夜だろうが昼だろうが公共の場だろうが、容赦はありません。
お母さんは今、忙しいだろうか?
ここで泣いたら周りに迷惑じゃないだろうか?
こんな泣きべその自分はダメなんじゃないだろうか?
そんなことは一切考えないのです。これが自己肯定感が傷ついていない、自己肯定感の第一象限、つまり自己否定も存在否定もない状態です。
たとえ心無い周りの人が迷惑がったとしても、それはその人の問題です。赤ちゃんは自分の存在が否定されているなんて気づきません。そして自分が否定されていることに気づかないので、自己否定も芽生えません。
生まれつき自己肯定感が低い人はいないのです。私たち誰もが、完璧な自己肯定感(自己肯定感が傷ついていない状態)で生まれてきています。
しかし、やがて赤ちゃんは成長し、人との関わりの中にいる自分を知り、自意識が芽生えます。そのプロセスのなかで、存在否定と自己否定を経験するのです。
その過程は自己肯定感の他の象限でさらに詳しく解説していきます。
自己肯定感は後天的
私たちは親の遺伝子を引き継いで生まれてきます。そしてある程度、遺伝を通して性格・体質的なものも引き継ぎます。
その中には例えば、不安が強い性格やストレスに弱い体質などもあるでしょう。そして、不安が強かったりストレスに弱かったりすると、ちょっとしたことで存在が否定されたと感じたりそれで大きなダメージを負ったりします。
ですから、自己肯定感を傷つけるような因子は遺伝すると考えるのは妥当なことだと思います。しかし、それは低い自己肯定感が遺伝しているのとは違います。後天的な経験を経て、そこに不安やストレスが絡んで自己肯定感が傷つくのです。
先ほど述べたように、私たちは完璧な自己肯定感をもって生まれ、それが経験によって傷つくと考えた方が良いのです。少なくともそう考えることで、自己肯定感という概念を理解しさらにそれを育みやすくなります。

より高い自己肯定感とは
自己否定がなく、存在否定がない状態が自己肯定感の第一象限です。
しかし、それでは不満足で「自己否定がない」ではなくて「自己受容が高い」でないといけない、そして「存在否定がない」ではなくて「存在承認が高い」でないといけない、と考える人もいるかもしれません。
それはもっともな考え方だと思います。
しかし究極の自己肯定感は自然体です。「あるがままの自分を受け入れる」「自分が自分であって大丈夫」は決して「より高い」ことではなく、そのままの自分で「何があっても大丈夫」なだけなのです。
そして不思議なことに「何があっても大丈夫」だと、その人は実力を存分に発揮できるようになります。
簡単なまとめ
私たち誰もが、自己否定も存在否定もない状態で生まれてきます。まだ自意識がないので、自分が自分を否定することも、自分が人に否定されていると感じることもないのです。
その自己否定も存在否定もない状態が自己肯定感の第1象限であり、自己肯定感が高い状態です。