
前回の記事「傷つき始めた自己肯定感」では、多くの人が「自分を受け入れてもらえなかった」という気持ちを味わい、それが第2象限の「自分は大丈夫ではない」という存在否定につながっていくことをお伝えしました。
この記事では、その存在否定がついには「(あるがままの)自分を受け入れられない」という自己否定につながってしまう自己肯定感の3番目の類型について考えます。
存在否定から自己否定へ ー 自己肯定感の第3象限
自己肯定感の第3象限は、4つの類型のうち左下に位置する、自己否定アリ・存在否定アリの状態です。(下記の図で赤枠で囲んだ部分)
どのようにして自己否定ナシだったものが自己否定アリに変わるのでしょうか?
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自己否定のタネが蒔かれていた
私たちの人生は右上に位置する第1象限の自己否定がなく存在否定もない(つまり自己肯定感が傷ついていない)状態で始まります。(赤ちゃんの自己肯定感 参照)
しかし、やがて私たちは人との関わりを通して自意識を育み、承認欲求と格闘し、存在否定を味わいます。それが自己肯定感の第2象限(自己否定ナシ・存在否定アリ)です。(傷つき始めた自己肯定感 参照)
自分を否定されている(と感じる)ことはつらい経験ですが、まだこの段階では否定が外側から来ているだけです。
しかし、存在否定が激しければ、そして長く続けば、いつか否定は私たちの内側からもやって来るようになります。

上の図は、自分という存在が否定され続けることで、存在受容のバランスが崩れ、自己否定というタネが自分の中に蒔かれ、やがてその根が張り始めていることを示しています。
なぜ、そのようなことが起こるのでしょうか?
自己否定のメカニズム ~ 同調
自分という意識がなければ、私たちはそれを否定しようもありません。第1象限で観たように、私たちは自己否定のない状態で人生をスタートしているのです。
しかし第2象限で観たように、私たちには自意識が芽生え、自分とは違う人や社会を意識するようになり、存在を否定(されたと思う)経験を味わいます。その過程では承認欲求が強く働き、私たちは承認して欲しい相手に非常に強い関心を持ちます。
それはすなわち、人や社会の言葉や行動を高く評価することに繋がります。そして、その価値観を受け入れ、いつしか同調してしまうのです。
同じことを別の言葉で説明します。
ダメ出しを受ければ誰もが反発します。しかし100%は跳ね返せません。少しずつダメージが残り、跳ね返すことがだんだん難しくなり、そしていつの間にか自分自身が自分自身への評価を下げていき、自分を否定してしまうのです。

自分が自分に違和感を感じる
まるで自己免疫疾患
自己免疫疾患は、自分の免疫システムが自分自身を攻撃してしまうとてもつらい症状ですが、自己否定もそれに似てとてもつらいものです。
それは自分が自分に違和感を感じる、なんとも言えない居心地の悪さだと思います。また、自分への信頼を失いますから、もともとあった能力まで発揮することが難しくなります。
何があっても大丈夫じゃない
最強の自己肯定感がは「あるがままの自分を受け入れ」「自分が自分であって大丈夫」となっている状態であり、結果として「何があっても大丈夫」となります。
この記事で紹介している第3象限は自己肯定感の2つの要素のどちらも否定されているので、第1象限の対局にあたり「何があっても大丈夫」の逆の「何があっても大丈夫じゃない」というという状態といえます。
(さらに詳しい自己否定の解説とその解消方法は別の記事で解説します。)
簡単なまとめ
存在を否定される経験が重なると、いつの間にか私たちは自分自身を否定し始めます。
この状態では自分が自分自身を否定・攻撃してしまいますので、とてもつらい症状となります。
ことわりがき
他の記事でもお伝えしていますが、ここで説明していることは自己肯定感という概念やそのメカニズムを理解し自己肯定感を育むためにわかりやすくモデル化したものです。
人は一人一人違いますから、カウンセリングを行うにあたってはこのモデルを過信せず、個別の事情に応じて丁寧に行ってください。